近年のAmazonでは、粗悪な商品や悪質な販売者によって、ユーザー体験が損なわれるケースが増えてきました。そうした問題に対処し、購入者の信頼を守るために、Amazon自身が「ブランドの保護と育成」に本格的に力を入れ始めています。
優れたブランドが長期的にAmazonで活躍できるよう、ブランド広告、ブランド分析、ブランドストア、比較テストなどブランドオーナー向けの専用機能を次々と導入しています。
そしてその中でも注目すべきが「ブランドストーリー」です。ブランドストーリーは、ブランドの想いや歴史、ビジョンといった“ストーリー”をビジュアルで表現し、ブランドが持つ価値を伝えることを目的として設計されています。
本記事では、Amazonブランドストーリーのメリットや具体的な作成方法、活用上の注意点やおすすめの構成を初心者にも分かりやすく徹底解説します。
これからAmazonで商品販売を始める方、既に出品中でブランド戦略を強化したい方はぜひ参考にしてみてください。
Amazonブランドストーリーとは?
Amazonブランドストーリーは、Amazonが提供するブランドオーナー向けの機能で、2021年12月に追加された機能です。
商品紹介コンテンツ(A+)の一部として、以下のように「ブランド紹介」という見出しのもとに表示されます。

画像やテキストを使って、ブランドの魅力を視覚的に訴求できるよう設計されており、ページ内でも目に留まりやすいエリアです。
ブランドロゴ、商品ラインの紹介、Q&A形式の情報など、複数のモジュールを自由に組み合わせて構成でき、ブランドや商品の魅力を視覚的に分かりやすく伝えることができます。
ブランドストーリーの構成

ブランドストーリーは、ブランドヒーロー画像(背景)とモジュールの組み合わせで構成されます。
ブランドヒーロー画像は、背景として固定され、その上に複数のモジュールが重ねて配置されます。
モジュールは左右にスクロールする仕様となっており、ユーザーはスワイプや矢印操作で順番に内容を確認することができます。
スマホでは表示サイズが異なるので、ブランドヒーロー画像はPCとモバイルで別に作成する必要があります。

ブランドストーリー≠ストーリーを語る場
その名称から、ブランドの想いや歴史といった「ストーリー」を語る場だと想像されがちですが、実際にはストーリー”だけを”語る場ではなく、さらに言えばストーリー自体が一切含まれていないケースも珍しくありません。
たとえば以下のように、人気商品の訴求やラインナップの比較など、商品の紹介に特化した構成が取られており、ブランドの背景よりも販促を重視した内容になっているケースも多く見られます。

ブランドストーリーは商品ごとに使い分けられる
またブランドストーリーは商品ページごとに変えることができ、カテゴリや商品に合わせてカスタマイズすることができます。
たとえば以下のようにゴキブリ対策の商品では「ゴキブリ特集」、蚊対策の商品では蚊特集と使い分けるといいです。


Amazonブランドストーリーのメリット
Amazonブランドストーリーは、ブランドの魅力や背景を伝えるのに非常に効果的な機能です。
以下のようにブランドストーリーを活用する大きなメリットがいくつかあります。
- 無料でブランドや商品のアピールができる
- 商品や商品に込められた想いを伝えるのに最適
- 他の商品もまとめて紹介できる
無料でブランドや商品のアピールができる
ブランドストーリーは商品ページ上に無料で追加できるコンテンツです。上手く利用することで、追加の販促コスト無しで売上アップに貢献してくれるでしょう。
つまりは”やり得”の施策であり、未設定のままにしておくのは非常にもったいないです。
仮にブランド力がまだ強くなくても、商品開発への想いや背景、他商品の紹介などを通じて訴求することで、十分に効果を発揮します。
そのため、Amazonで自社ブランドを展開するすべての出品者にとって活用必須の機能といえるでしょう。
ブランドや商品に込められた想いを伝えるのに最適
ブランドストーリーの最大の強みは、通常のスペックや説明文では伝えきれない「想い」や「背景」を語れることです。
たとえば、
- なぜブランドを作ろうと思ったのか
- どんな工夫や苦労があったのか
- 環境や社会への配慮、素材選びへのこだわり
といった情報を丁寧に伝えることで、顧客はその商品に込められた価値を深く理解しやすくなります。
実際、ブランドストーリーを設定することで、お客さんがブランドの想いに共感して購買意欲の向上につながるケースは多々あります。
類似の訴求はA+(商品紹介コンテンツ)でも可能ですが、A+はあくまでその商品の説明に特化しているのに対し、ブランドストーリーはブランド全体の文脈で語れる点が大きな違いです。
私自身も以前はA+コンテンツ内で画像や文章を使ってストーリーを語っていましたが、やはり「ブランドに紐づけて伝える」ことで、より説得力のある一貫したメッセージを発信できると実感しています。
ブランドや商品に込められた想いを語るなら、ブランドストーリーが最も適した場所だと言えるでしょう。
他の商品もまとめて紹介できる
ブランドストーリーのモジュールには、自社の他商品を表示する機能があります。
これを活用すれば、ある商品のブランドストーリー内で別の関連商品や新商品の情報を掲載し、そこから該当商品ページやブランドストアへ誘導することが可能です。
以下のように、ブランドストーリーでは最大4つまでの別商品を画像付きで紹介できるモジュールがあり、「ストアにアクセス」というテキストリンクも設置できます。

こうした導線を設けておくことで、ユーザーに他の商品に気づいてもらいやすくなり取りこぼしを減らすことができます。
「そっちの方が合っていた」「それも欲しかった」ということに気づいてもらえるきっかけとなり、ブランド全体としての接触機会を広げることにつながります。
Amazonブランドストーリーの作成方法
実際にAmazonブランドストーリーを作成する手順を説明します。
基本的にはセラーセントラル上で商品紹介コンテンツ(A+)を新規作成する流れの中でブランドストーリーを選択する形になります。操作自体は難しくないので順を追って進めてみましょう。
ブランドストーリー設定画面へのアクセス方法
まずはセラーセントラルメニューより、「在庫」→「商品紹介コンテンツ管理」へと進みます。

画面右上の「商品紹介(Aプラス)コンテンツの作成を開始する」ボタンを押します。

商品紹介(Aプラス)コンテンツの選択画面より、「ブランドストーリー」を選択します。

コンテンツ名と言語を設定します。コンテンツ名は商品ページに表示される項目ではないので、カテゴリや商品などが分かりやすいように自社で統一した形式にしておくといいです。

ここからは、実際に設定画面を使ってブランドストーリーのコンテンツを作成する方法を解説します。
背景の設定
ブランドストーリーは以下のように背景(ブランドヒーロー)とモジュールの組み合わせで構成されます。
まずは背景画像の設定からおこないます。

「ロゴ入りブランドスヒーロー画像」の項目より、「+背景画像を設定する」ボタンを押します。

PC用とモバイル用の背景画像を追加します。
PCとモバイルでは表示サイズが違うので、2つ用意する必要があります。
- パソコン用:1464×625px
- モバイル用:625×463px

モジュールの作成
背景画像が設定出来たら次はモジュールの作成です。
「モジュールの追加」ボタンより、モジュールを次々追加していきます。

すべての操作が完了したら「次:ASINを適用」ボタンを押し、ASINを設定します。
後は審査に通ればブランドストーリー作成が完了します。

一度公開した後も編集・更新は可能ですので、効果検証を行いながら適宜コンテンツを改善していくとよいでしょう。
Amazonブランドストーリーのモジュールの種類
ブランドストーリーでは、モジュールは合計最大19個まで組み合わせて配置可能です。
以下の4種類のモジュールを利用できます。
- ブランドカード4つのASIN
- ブランドカードについて
- ブランドカードメディア資産
- ブランドカードに関する質問
いずれも、おそらく英語表記の翻訳ミスによるものと思われ、日本語としてはやや意味が分かりづらい名称になっています。
それぞれについて詳しく説明します。
ブランドカード4つのASIN

4つのASINとブランドストアを掲載できるモジュールです。
ユーザーが商品画像をクリックするとそれぞれの商品ページに遷移します。
ブランドストーリー内に設置することで、関連商品や主力商品をまとめて紹介でき、ユーザーにブランドのラインナップを効率的にアピールできます。
特に「この商品も気になる」というような興味を喚起しやすく、ブランド全体での売上増加が期待できます。
このモジュールは、ブランドストーリー機能の中でも圧倒的に使用率が高く、ほぼすべてのブランドが利用しているといっても過言ではない定番モジュールです。
また、モジュールはブランドストーリー内で複数回使用することが可能なので、「カテゴリ別」、「用途別」などのテーマに応じてそれぞれ配置することで、より分かりやすく商品ラインナップを整理して伝えることができます。
なお画像サイズは、各166×182pxです。
■編集画面

ブランドカードについて

モジュール名からは内容を推測しづらいですが、実際には「ブランドロゴ」と「テキスト(見出し+文章)」を組み合わせて表示するシンプルな構成です。
使用目的としては、ブランドの理念や開発背景、想いなどを伝えるのに適しており、画像とテキストをセットで使うことで、文章だけでは伝わりにくいニュアンスをビジュアルとともに補完できます。
例えば、「なぜこのブランドを立ち上げたのか」「どのような課題を解決したいと思ったのか」といったストーリー性のある情報を掲載することで、ユーザーに感情的なつながりや共感を持ってもらいやすくなります。
このモジュールは、先ほど紹介した「ブランドカード4つのASIN」に次いで使用されることが多く、使用率としてはおおよそ半々程度といった印象です。
なお画像サイズは、315×145pxです。
■編集画面

ブランドカードメディア資産

こちらも意味不明なモジュール名ですが、「画像」と「テキスト(見出し+文章)」を組み合わせたモジュールです。
先ほどの「ブランドカードについて」と同様に画像+文章という形式ですが、大きな違いは、画像が“背景画像”として使われ、その上に文字が重ねて表示される点です。
見た目の印象としては、ビジュアルの主張がより強く、画像が訴求の主役になります。
「ブランドカードメディア資産」の利用率は体感3割程度で、利用用途としては「ブランドカードについて」と同じだと考えて大丈夫です。
「ブランドカードについて」と「ブランドカードメディア資産」が選択でどちらかが使われていることが多い印象です。
なお背景画像サイズは、362×453pxです。
■編集画面

ブランドカードに関する質問

Q&A形式で最大3つの質問と回答を載せられるモジュールです。
最大600文字の長文テキストを入力可能で、よくある問い合わせへの回答などを掲載したい場合に利用できます。
ただし、この「ブランドカードに関する質問」モジュールを実際に使用しているブランドは非常に少なく、私がブランドストーリーを研究するために100商品以上を調査した中では、わずか1ブランドでしか確認できませんでした。
私自身も使ったことはなく、正直このモジュールは無理に使う必要はないと思います。他のモジュールの方が訴求性が高いです。
■編集画面

Amazonブランドストーリーのおすすめ構成
Amazonブランドストーリーを作成する上で重要なのは、どのようなモジュール構成にするのか、そして背景ビジュアルとモジュールをどのようにして上手く構成するかという点です。
モジュール構成
モジュール構成としては、以下の3つがおすすめです。
- 3~5個のブランドカード4つのASINだけ
- ブランドカードについて(もしくはブランドカードメディア資産)+3~5個のブランドカード4つのASIN
- 3~5個のブランドカード4つのASIN+ブランドカードについて(もしくはブランドカードメディア資産)
基本となるのは「ブランドカード4つのASIN」モジュールで、商品をカテゴリや用途ごとにグルーピングして3〜5個ほど配置するのが効果的です。
さらに、「ブランドカードについて」または「ブランドカードメディア資産」のどちらかを先頭か末尾に追加することで、ブランドの背景や想いなどを補足し、ユーザーにストーリー性を持って伝えることができます。
なお、このテキスト系モジュールを使わないパターンも十分に成立しますが、一番のおすすめは、「ブランドカード4つのASIN」モジュールに加え、末尾に「ブランドカードについて」を加える構成です。
背景とモジュールの組み合わせ
そして、ブランドヒーロー画像(背景)とモジュールは組み合わせた時に最適な配置となっている必要があります。
モジュールはブランドストーリー内でやや右寄りに配置されるため、左側に余白が生まれます。そこに上手くビジュアルを配置できれば、視覚的にバランスの取れた美しいファーストビューを実現できます。
以下の画像はアイリスオーヤマの例ですが、背景ビジュアルとモジュール配置のバランスが非常にうまく設計されています。

また、「ブランドカード4つのASIN」も単に商品画像を並べるのではなく、「A4」「100μm」「片面マット」などの分類情報を画像内に明示的に入れることで、ユーザーが自分に必要な商品を見つけやすくなります。
このように、画像とモジュールがセットで最適化されているかどうかが、ブランドストーリー全体の完成度を左右します。
Amazonブランドストーリー利用上の注意点
メリット盛りだくさんのブランドストーリーですが、使うにあたって押さえておくべき前提条件や注意点もあります。
- ブランド登録が必須
- 画像素材が2種類必要
- ガイドライン遵守
ブランド登録が必須
ブランドストーリーを利用するには事前にAmazonブランド登録を完了させる必要があります。
登録には商標権(商標登録証)やブランドロゴ、商品画像などの提出が求められ、承認までに時間がかかる場合もあります。
ブランドストーリーを使いたい方はまず商標取得・ブランド登録を済ませましょう。
画像素材が2種類必要
ブランドストーリーではPC表示用(デスクトップ)とモバイル表示用の背景画像をそれぞれアップロードする必要があります。デスクトップ版が1464×625px、モバイル版が463×625pxです。
片方しか用意しないと先に進めない仕様になっていますので注意してください。
アップロード後はプレビューやテスト用商品で実際の見え方を確認し、必要に応じてトリミング調整するといいです。
ガイドライン遵守
Amazonの規約上、ブランドストーリーにもコンテンツガイドラインがあります。
ガイドラインについては商品紹介コンテンツ(A+)と共通のものです。以下のガイドラインをよく読んでガイドライン違反をしないように気をつけてください。
Amazon公式:商品紹介コンテンツガイドライン
なお、ガイドラインに違反している場合はブランドストーリーが承認されないことがありますが、修正して再提出することは可能です。焦らず、丁寧に修正して対応すれば問題ありません。
まとめ
本記事では、Amazonブランドストーリーについて徹底解説してきました。
以下にその要点をまとめておきます。
Amazonブランドストーリーについて
Amazonブランドストーリーは、ブランドロゴ、商品ラインの紹介、Q&A形式の情報など、複数のモジュールを自由に組み合わせて構成でき、ブランドや商品の魅力を視覚的に分かりやすく伝えることができる機能です。
Amazonブランドストーリーのメリット
ブランドストーリーには以下のようなメリットがあり、コンバージョン率や客単価の向上が見込めます。
- 無料でブランドや商品のアピールができる
- 商品や商品に込められた想いを伝えるのに最適
- 他の商品もまとめて紹介できる
Amazonブランドストーリーの構成
ブランドストーリーは背景(ブランドヒーロー)とモジュールの組み合わせで構成されます。
以下の4つのモジュールを複数組み合わせて作成することが可能です。
- ブランドカード4つのASIN
- ブランドカードについて
- ブランドカードメディア資産
- ブランドカードに関する質問
背景ビジュアルとモジュール配置のバランスを考えて構成する必要があります。
Amazonブランドストーリー利用上の注意点
Amazonブランドストーリーの利用にはブランド登録が必須です。
またPC表示用とモバイル表示用の2種類の背景画像を用意する必要があります。
またブランドストーリー作成の際いにはAmazonによって定められたガイドラインを遵守する必要があります。