AmazonでFBAを利用して商品を販売していると、毎月必ずかかってくるのが「在庫保管手数料」です。
在庫保管手数料とは一口に言っても、実は複数の種類があり、「いつ発生するのか?」「どれくらいかかるのか?」が複雑で分かりにくいというのが現状です。
本記事では、不要な手数料をできるだけ避けるために、それぞれの在庫保管手数料がどういう条件で発生して、どのように計算、確認できるかという点を徹底的に解説していきます。
在庫保管手数料の種類一覧

在庫追加手数料には下の4種類があります。
種類 | 説明 |
---|---|
FBA在庫追加手数料 | 通常の保管にかかる毎月の手数料 |
在庫保管追加手数料 | 売上に対して過剰な在庫数を抱えている場合にかかる手数料 |
長期在庫追加手数料 | 保管期間が271日以上の場合にかかる手数料 |
低在庫レベル手数料 | 需要に対して在庫が少なすぎる場合にかかる手数料 |
毎月必ず発生する「FBA在庫保管手数料」に加えて、在庫が多すぎる場合にかかる「在庫保管追加手数料」、保管期間が長すぎる場合にかかる「長期在庫追加手数料」、逆に在庫が少なすぎる場合にかかる「低在庫レベル手数料」があります。
これらについて計算、確認方法を詳しく解説していきます。
FBA在庫保管手数料

FBA在庫保管手数料は、FBA倉庫に在庫を保管する際に毎月かかる、最も基本的な手数料です。
商品カテゴリ、サイズ区分、時期、在庫保管の体積によって1日単位で算出され、月ごとに請求されます。
FBA在庫保管手数料の計算方法
サイズ区分別の1か月ごと、1000cm3当たりのFBA配送代行手数料は以下の表をご覧ください。
服&ファッション小物、シューズ&バッグカテゴリを除くカテゴリ
月 | 小型・標準 | 大型・特大型 |
---|---|---|
1月~9月 | 5.676円 | 3.278円 |
10月~12月 | 10.087円 | 6.984円 |
服&ファッション小物、シューズ&バッグカテゴリ
月 | 小型・標準 | 大型・特大型 |
---|---|---|
1月~9月 | 3.10円 | 3.10円 |
10月~12月 | 5.50円 | 5.50円 |
出典:Amazon公式「在庫保管手数料」
以下の2種類の商品について、FBA在庫保管手数料のシミュレーションをします。
財布の場合の計算
- カテゴリ:ファッション
- 容積:3cm×12cm×15cm(540cm3)
- 個数:1000個
1~9月:3.10 ×{540cm3/1000cm3}× 1000(個)= 1,674円/月
10~12月:5.50 ×{540cm3/1000cm3}× 1000(個)= 2,970円/月
➡ 1年を通して平均すると、月あたり約2,000円の在庫保管手数料になります。
スーツケースの場合の計算
- カテゴリ:ファッション
- 容積:25cm×40cm×60cm(60000cm3)
- 個数:1000個
1~9月:3.10 ×{60000cm3/1000cm3}× 1000(個)= 186,000円/月
10~12月:5.50 ×{60000cm3/1000cm3}× 1000(個)= 330,000円/月
➡ 1年を通して平均すると、月あたり約22万円の在庫保管手数料になります。
このように、同じカテゴリの商品であっても、サイズにより100倍以上在庫保管手数料が違うので、注意が必要です。
FBA料金シミュレーターでの計算
FBA料金シミュレーターを使うことで、FBA在庫保管手数料を計算することもできます。
「商品の定義」タブより、商品単位での寸法を入力します。
この時の注意点として、商品のパッケージなどを含む商品単位での梱包サイズを記入するようにしてください。

「在庫保管手数料」の項目に手数料が表示されます。
商品当たりや販売商品当たりの手数料も目安として便利です。

ただし、この数字は消費税が含まれていないことにご注意ください。
そのため、1.1倍したものが正しい消費税込みの手数料です。
FBA料金シミュレーターはなぜか消費税込みと抜きが混合しており、その点は注意が必要です。
FBA在庫保管手数料の確認方法
FBA在庫保管手数料が実際にいくらかかったか、確認することもできます。
セラーセントラルトップページの左上三本線のメニューより「レポート」→「フルフィルメント」へと進みます。

左側の「在庫保管手数料レポート(月次)」に進むと、在庫保管手数料レポートがダウンロードできます。
「Monthly storage fee (est.)」の項目が「FBA在庫保管手数料」と「在庫保管追加手数料」の合計手数料です。ただし税抜きの金額であることには注意が必要です。

FBA在庫保管追加手数料

売上高に対して過剰な在庫数を抱えている出品者に対しては、在庫保管追加手数料がかかります。
在庫保管追加手数料が発生する条件
追加手数料の金額は、「在庫保管スペースの使用比率」に基づいて決まります。この在庫使用比率は、過去13週間の「1日あたりの平均在庫容積」を「1日あたりの平均出荷容積」で割った値です。
この在庫使用比率が26週を超えている場合に毎月、在庫保管追加手数料がかかります。
1000cm3当たりの在庫保管追加手数料は以下の表をご覧ください。
在庫使用比率 | 服&ファッション小物、シューズ&バッグ以外 | 服&ファッション小物、シューズ&バッグ | |
---|---|---|---|
小型/標準 | 大型/特大型 | 全てのサイズ | |
26~39週 | 1.462円 | 0.316円 | 0.817円 |
39~52週 | 3.997円 | 1.023円 | 3.645円 |
52週超 | 16.762円 | 3.842円 | 10.370円 |
なお、以下の出品者には在庫保管追加手数料は発生しません。
- 大口出品者であり、在庫保管使用率が26週以下の出品者
- 新規出品者(過去52週未満の間にはじめて在庫をAmazonに納品した出品者)
- 小口出品者
- 1日の平均在庫容積が0.71立方メートル未満の出品者
出典:Amazon公式「在庫保管手数料」
在庫使用比率が「週」という単位になっているのは、「26週間在庫を保持していたら追加手数料がかかる」という意味ではありません。
「過去13週間の1日あたりの平均在庫容積」を「過去13週間の1日あたりの平均出荷容積」で割った値が26週(26×7=182日)分以上になると在庫保管追加手数料が発生するということです。
例えば、過去13週の1日の平均在庫容量が1000m3で、過去13週の1日の平均出荷容量が5m3だとします。
この場合、1000m3÷5m3=200となり、182(26×7日)を超えるので、在庫保管追加手数料が発生します。
26週(182日)というのは約6か月ですから、簡単に言うと、6カ月分以上の在庫を保有したら在庫保管追加手数料がかかってしまうということです。
在庫保管追加手数料が発生するか確認する方法
在庫保管追加手数料を直接確認する方法はありませんが、セラーセントラルトップページからアクセスできる、「在庫パフォーマンス指標」の「FBA販売率」より指標が確認できます。

FBA販売率とは、過去90日間の販売数量を過去90日間の平均在庫数で割ったものです。
この値が0.5以下だと、在庫保管追加手数料がかかると言ってほぼ間違いありません。
というのも在庫保管追加手数料の計算基準は「直近13週間(=91日)」であり、FBA販売率の算出期間(90日)とほぼ一致しているためです。
なお、商品ごとのFBA販売率は、メニューの「在庫」→「FBA在庫管理」の「FBA販売率」の項目により確認できます。

FBA長期在庫追加手数料

長期間在庫を保有している場合には、長期在庫追加手数料(旧:長期保管手数料)がかかります。
長期在庫追加手数料が発生する条件
長期在庫追加手数料はFBA倉庫に預けているそれぞれ個別の商品の保有日数が270日を超えた場合に、毎月発生します。
つまり、約9か月以上売れずに残っている在庫があると、その商品には毎月追加の手数料がかかり続けます。さらに、保管期間が長引くほど手数料の金額も上がっていくため、注意が必要です。
保有期間ごとの長期在庫追加手数料は以下の表をご覧ください。
保有期間 | 手数料(1000cm3あたり) |
---|---|
271~300日 | 16.662円 |
301~330日 | 17.475円 |
331~365日 | 18.085円 |
366日以上 | 34.239円 |
※保管期間が365日を超えているメディア商品は、商品1点あたり月額10円の最低長期在庫保管手数料の対象になります
出典:Amazon公式「長期保管手数料」
長期在庫追加手数料が発生するか確認する方法
セラーセントラルトップページの左上三本線のメニューより「在庫」→「FBA在庫管理」へと進みます。

各商品の「在庫保管日数」の項目にて期間ごとの在庫数が分かります。

ただし、これだけだとより270付近の在庫数は正確には分かりません。
そこで先ほどの「詳細」をクリックして矢印ボタンから展開することで、より詳細なデータを確認することができます。
また、商品ごとの長期在庫追加手数料は先ほどの「在庫の保管日数」の1つ右の「長期在庫の追加料金の見積り」より確認できます。

長期在庫追加手数料の確認方法
商品全体で長期在庫追加手数料がいくらかかっているか調べるためには、「長期在庫保管の追加手数料レポート」を参照します。
まずはセラーセントラルトップページの左上三本線のメニューより「レポート」→「フルフィルメント」へと進みます。

左側の「長期在庫保管の追加手数料レポート」よりレポートのオンライン閲覧またはダウンロードができます。

低在庫レベル手数料

低在庫レベル手数料とは、購入者の需要に対して在庫が少ない小型/標準サイズの商品に関して、商品ごとに発生する手数料です。
在庫保管追加手数料や長期在庫追加手数料は在庫が多すぎることによって発生する手数料ですが、一方で低在庫レベル手数料は在庫が少ないことによって発生する手数料です。
低在庫レベル手数料が発生する条件
長期(直近90日間)および短期(直近30日間)の過去在庫日数の両方とも14日未満である場合に低在庫レベル手数料が発生します。
過去在庫日数は、1日の平均在庫数を1日の平均出荷点数で割って算出されます。
例えば、1日の平均在庫数が300個、1日の平均出荷数が10個の場合、
過去在庫日数は、300÷10=30日となります。
この在庫日数は、長期(直近90日間)および短期(直近30日間)の大きい方で計算されます。
低在庫レベル手数料の計算方法
在庫日数が14日未満の場合、低在庫レベル手数料が商品の販売ごとにかかります。
サイズ区分ごとの低在庫レベル手数料は以下の表をご覧ください。
サイズ区分 | 過去在庫日数 7日未満 | 過去在庫日数 7~13日 |
---|---|---|
小型 | 9円 | 5円 |
標準1 | 9円 | 5円 |
標準2 | 22円 | 7円 |
標準3 | 22円 | 7円 |
標準4 | 22円 | 7円 |
標準5 | 22円 | 7円 |
標準6 | 22円 | 7円 |
標準7 | 22円 | 7円 |
標準8 | 30円 | 8円 |
※上記のサイズ区分はFBA配送代行手数料のサイズ区分に従います
以下のようなケースでは低レベル手数料は発生しません。
- 大型/特大型サイズの商品。
- 過去30日間に販売履歴のない商品。
- 新規大口出品者(最初の在庫受領日から365日間)。
- FBAを新規に利用する親商品(最初の在庫受領日から180日間)。この特典を受けるには、出品者はFBA新商品特典プログラムに登録する必要があります。
- 過去7日間の販売点数が20点未満の商品。
出典:Amazon公式「低在庫レベル手数料」
低在庫レベル手数料が発生するか確認する方法
セラーセントラルトップページの左上三本線のメニューより「在庫」→「FBA在庫管理」へと進みます。

商品ページ(親ASIN)ごとの在庫日数は、過去の在庫日数(親ASIN)から確認できます。
また、フィルターの「低在庫レベル手数料」より、手数料が適用される商品を絞り込むことができます。

在庫保管手数料を抑える方法
在庫保管手数料を抑える方法は以下の5つです。
- 6カ月分以上の在庫をFBAに入れない
- 広告・セールを活用する
- 倉庫を別に借りる
- 在庫の定期チェックを習慣にする
- 売れる商品を作る
6カ月分以上の在庫をFBAに入れない
在庫保管追加手数料は「約6カ月以上」、長期保管手数料は「約9カ月以上」の在庫に対して発生します。そのため、FBAに入れる在庫は6カ月分以下に抑えるのがまずは必須の条件です。
ただし、6カ月分であっても特に大きい商品は保管コストが高くなりがちなので、理想としては1〜3カ月分程度の在庫にしておくのがベストです。
とはいえ、需要というのは検索順位のわずかな変動などでも簡単に変化し、完全に予測することは難しいため、「必ず◯カ月分」といった明確な正解があるわけではありません。
だからこそ重要なのは、「FBAに入れる在庫=今すぐ売る分」という意識を持つことです。とりあえずFBAに突っ込んでおくという運用をしてしまうと、保管手数料のリスクが一気に高まります。
倉庫に入れる時点である程度「この在庫は〇ヶ月以内に売り切るつもりだ」という見通しを持つこと、過剰在庫は後述の外部倉庫に保管しておき、必要に応じて小分けして納品するような設計をしておくことが、無駄なコストを防ぐうえで非常に重要です。
広告・セールを活用する
在庫保管手数料に悩んだとき、多くの人が「廃棄」や「返送」といった消極的な手段を真っ先に検討しがちですが、もっと効果的で前向きな施策があります。それが「広告」や「セール」を活用した在庫調整です。
広告やセールを活用することで、在庫を効率よく処分しながら、次の販売につながるプロモーションとしても機能させることができ、一石二鳥の施策となります。
在庫を廃棄する、返送して他販路で販売するなどの消極的な施策は明らかに商品が売れないなどのどうしようもないケース以外では推奨できません。
実際、私は広告・セールでの在庫対策以外に何か特別なことはしていませんが、在庫過剰で困ったことはありません。
Amazonでは年中何かしらのセールが開催されているので、在庫調整の機会は常に存在します。適切なタイミングで販促を仕掛けることで十分に在庫量の管理は可能です。
倉庫を別に借りる
Amazon倉庫とは別に倉庫を借りるのもおすすめです。
かつてはFBA倉庫のコストはかなり安かったのですが、今は在庫手数料の度重なる改定によって他の倉庫を別に借りることが有力な選択肢になってきています。
検品、ラベル貼り、個別発送などに対応してくれる倉庫もあるので、あなたに合った倉庫を探すことで、在庫コストだけでなく、他のコストや労力を抑えることが可能になるケースも少なくありません。
倉庫を借りるのは、特に以下の人におすすめです。
- 販路がAmazon以外にもある
- ボリュームディスカウントが大きい商品を扱っている
- MOQが大きい商品を扱っている
販路がAmazon以外にもある場合、別倉庫に在庫を保管しておけば、複数販路に柔軟に対応することができます。
ボリュームディスカウント(大量購入による値引き)が大きい商品を扱っている場合は、単価を下げるためにある程度まとまった数量を仕入れる必要がありますが、それをすべてFBAに納品すると保管手数料が高くついてしまいます。
そこで、まずは必要分だけFBAに入れて、残りは外部倉庫に保管しておくという戦略が有効です。
またMOQ(最小発注数量)が大きい商品を扱っている場合も同様で、一度に仕入れる量が多くなりやすいため、全量をFBAに入れるのは非効率です。
FBAはあくまで「今売る分だけ」に限定し、それ以外は別倉庫に保管しておくことで、在庫保管コストを最適化することができます。
在庫の定期チェックを習慣にする
在庫保管手数料を抑える上で、在庫状況を定期的に見直すことは意外と見落とされがちですが、非常に重要な習慣です。
「ダイエットは体重測定から」と言われますが、「在庫のスリム化も在庫の観測から」始める必要があります。
ここでいう在庫とは、FBA倉庫にあるものだけではありません。製造中・輸送中・貸倉庫・FBA倉庫・納品中など、すべての在庫を把握することが重要です。最低でも月1回はこれらの全体像を確認することをおすすめします。
このような確認を定期的におこなっていれば、「納品スケジュールは適切か」、「次の発注量は少なめにしよう」といった対応が事前にできます。
在庫管理は、「一度入れたら終わり」ではありません。FBAに預けている以上、時間が経つごとに手数料という“目に見えにくいコスト”がじわじわとかさんでいく構造になっています。
だからこそ、意識的に「チェックする習慣」を持つことは、無駄なコストを削減する最も堅実で効果的な方法のひとつだと言えるでしょう。
売れる商品を作る
これまでテクニック的な話をしてきましたが、「在庫保管手数料がかかりすぎる」──この悩みを根本的に解決する方法は、「売れる商品を作る(仕入れる)こと」に尽きます。
かつてAmazonは「何でも揃うお店」を目指して、ニッチな商品まで網羅する“ロングテール戦略”で成長してきました。しかし現在はFBA倉庫のコストが深刻化しており、その結果、これまで説明してきたように売れ残った在庫には強いペナルティ(長期在庫追加手数料など)が課される仕組みに変わってきています。
その結果、Amazonは少なくともFBAにおいては高回転率の方向性にシフトしています。つまり、月に数個しか売れないようなロングテール商品は、もはやFBAには向かないのです。
逆に売れる商品であれば在庫が多少多くなっても問題ありません。需要さえあれば在庫手数料がかからないようにする方法は、先述の広告・セールの活用など、いくらでもあるからです。
在庫保管手数料に常に悩んでいるとしたら、それは単に「仕入れすぎた」からではありません。そもそも、その商品に十分な需要がなかったことが問題なのです。
在庫手数料の増加もあり、かつて盛んだった相乗りFBA輸入転売などのロングテール商品を扱う手法は、もはや通用しなくなってきています。
ではどうやって需要がある商品を販売するかというと、自社ブランドの商品として需要があるものを制作するというのがおすすめです。
難易度は低くはないですが、長い目で見るとそれ以外に生き残っていく道はないと思います。